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水の都「松江」と鋼の街「安来」。データが語る、4つの異なる商圏物語と出店戦略

島根県の東部に位置する松江市安来市。宍道湖と中海という二つの水辺に抱かれ、豊かな自然と深い歴史を共有するこの二都市は、一見すると穏やかな地方都市の顔を見せます。しかし、ビジネスの視点でその内側を覗き込むと、そこには驚くほど多様で、力強い経済の鼓動が脈打っています。

経済産業省の指標で「暮らしやすさ日本一」と評された松江市は、観光都市としての華やかさと、県都としての堅実な都市機能を併せ持ちます。一方の安来市は、世界に誇る特殊鋼ブランドを擁する「ものづくり」の拠点として、底堅い産業基盤に支えられています。 テナント出店を考える際、これらを単なる「山陰の地方都市」と十把一絡げに捉えるのはあまりに惜しいことです。川一本、道一本隔てるだけで、そこに住む人々の属性も、求めるサービスも、街の流れる時間さえもがらりと変わるからです。

本コラムでは、最新の商圏データを羅針盤として、松江市内の主要3エリアと安来市、計4つの商圏が持つ「物語」を読み解き、それぞれの土地に根差した成功へのシナリオを描き出します。

■10秒でわかる!この記事の内容
・松江市南部(橋南): ビジネスと商業が交錯する都市の心臓部。昼間人口が圧倒的に多く、高感度な消費とスピード感が求められる「攻め」の商圏。
・松江市北部(橋北): 国宝・松江城の足元に広がる歴史と学問の街。観光客の喧騒と学生の活気が混じり合う、文化的な土壌が魅力。
・松江市東部: 新しい住宅が建ち並ぶ子育て世代の楽園。ファミリーの生活動線上にあり、教育や医療、日常の利便性が何よりも優先される。
・安来市エリア: 屈指の製造業が集積する職住近接の街。持ち家率が高く、地域に根を下ろした堅実な暮らしを支えるサービスが求められる。
・ターゲットの生活スタイルを想像し、エリアごとの「色」に合わせた出店戦略こそが、長く愛される店づくりの第一歩となる。

■都市の熱気と消費が渦巻く「松江市南部(橋南)」

大橋川の南側に広がる「橋南」エリアは、松江市の経済活動を一手に引き受ける、いわばエンジンのような場所です。JR松江駅を核として、ホテルや金融機関、オフィスビルが林立し、国道9号線などの幹線道路が動脈のように走っています。

商圏データが示すこの街の最大の特徴は、その「吸引力」にあります。昼間人口は夜間人口を大きく上回っており、これは毎朝、市内外から多くの人々がこの場所に働きに、あるいは遊びに訪れていることを意味します。街を行き交うのはスーツ姿のビジネスパーソンや、感度の高いショップを目指して訪れる若者たち。彼らは、ここ松江において最も活発な消費の担い手です。 また、駅周辺には単身世帯賃貸住宅に住む層が多く、彼らは「時間」と「利便性」を金銭で買う傾向にあります。

こうした背景を持つ橋南エリアでの出店は、都市型ライフスタイルへの提案が鍵を握ります。例えば、多忙なビジネスマンが束の間の休息を求めるランチタイムや、仕事終わりの一杯を楽しめるバル居酒屋は、依然として高い需要があります。また、自分への投資を惜しまない層に向けて、最新の機器を備えたフィットネスジムや、洗練された美容クリニックリラクゼーションサロンを展開するのも勝算が高いでしょう。家賃相場は市内で最も高い水準にありますが、回転率を高め、高付加価値なサービスを提供することで、十分にリターンが見込める熱い商圏です。

■歴史の薫りと若者の息吹が同居する「松江市北部(橋北)」

橋南の喧騒から大橋川を渡り北へ向かうと、空気は一変します。そこは、国宝・松江城の天守が見守る「橋北」エリア。江戸時代の地割りが残る城下町であり、島根県庁松江市役所が厳かに佇む行政の中心地でもあります。しかし、この街の面白さは、そうした重厚な歴史の顔だけではありません。

島根大学を擁するこのエリアの人口データには、際立った特徴があります。それは、20代の若者比率が非常に高い一方で、古くからの住宅地には高齢者が多く住んでいるという「二極構造」です。観光客がそぞろ歩くレトロな街並みのすぐ裏手には、学生たちが自転車で行き交う生活道路があり、歴史と若さが不思議なバランスで共存しています。

この独特な土壌でのビジネスは、ターゲットを絞り込む面白さに満ちています。城下町の風情を活かし、古民家をリノベーションしたカフェ雑貨店を開けば、観光客の旅の思い出になると同時に、地元住民の憩いの場としても愛されるでしょう。一方で、学生街としての側面を見れば、安くてボリューム満点の定食屋や、古着屋、あるいは一人暮らしの必需品であるコインランドリーといった業態は、いつの時代も変わらぬ需要があります。また、高齢者層に目を向ければ、徒歩圏内で完結するデイサービス配食サービスなど、地域密着型の福祉ビジネスにも大きな可能性があります。新旧の文化が入り混じるこの街では、オーナーの個性が光る「尖った」店づくりこそが成功への近道かもしれません。

■家族の笑顔と新しい生活が芽吹く「松江市東部」

松江駅から東へ、あるいは南東部へと車を走らせると、車窓には新しい住宅やアパートが目立つようになります。近年、宅地開発が進み、人口増加の受け皿となっているのがこの「東部」エリアです。ここは、松江の未来を担うベッドタウンと言えるでしょう。

この街の主役は、まさに「子育てファミリー」です。30代から40代の働き盛り世代と、その子供たちの姿が多く見られ、街全体に成長のエネルギーが満ちています。彼らの生活は基本的に車移動が中心です。週末には家族揃って大型スーパーへ買い出しに出かけ、ロードサイドのレストランで食事を楽しむ。そんな光景が日常となっています。

東部エリアでビジネスを展開するなら、この「ファミリーの日常」に寄り添うことが絶対条件です。広い駐車場を備えたロードサイド店舗であることは大前提として、その中身も家族全員が喜ぶものである必要があります。回転寿司焼肉店などの大型飲食チェーンはもちろん、教育熱心な家庭に向けた学習塾英会話スクール、子供の急な発熱にも対応できる小児科クリニックなどは、地域のインフラとして歓迎されます。また、共働き世帯の忙しい毎日を支える、テイクアウト専門店ドラッグストアなど、家事の負担を減らすサービスも、この街の住人たちの心を掴んで離さないでしょう。

■鋼のような絆と堅実な暮らしが根付く「安来市」

松江市の東に隣接する安来市は、かつてたたら製鉄で栄え、現在は日立金属(現:プロテリアル)をはじめとする先端金属産業が集積する「ものづくり」の街です。この街の商圏を読み解くキーワードは「安定」と「定住」です。

データが示す安来市の特徴は、製造業に従事する人の割合が極めて高いこと、そして持ち家率が高く、長くその地に住み続ける人が多いことです。景気の波に左右されにくい強固な産業基盤があり、そこに根を下ろして働く人々が、堅実な地域経済を支えています。流動的な松江の都心部とは対照的に、ここには顔の見える濃密なコミュニティが存在します。

安来市での出店戦略は、奇をてらうことよりも、地域の生活に深く根ざすことが求められます。工場で働く人々の胃袋を満たす、安くて旨いラーメン店定食屋。あるいは、日々の仕事の疲れを癒やす整体マッサージ店。これらは、派手さはなくとも長く愛されるビジネスの筆頭です。また、国道9号線沿いなどの主要道路では、コンビニエンスストアホームセンターカー用品店といった、生活必需品を扱う店舗が安定した強さを発揮します。一見客を追うのではなく、地域の人々と信頼関係を築き、日常の一部となること。それが、この実直な街でビジネスを成功させる鉄則です。

■この記事のまとめ

松江・安来エリアは、車で数十分も移動すれば景色が変わるように、商圏の性格もドラマチックに変化します。 華やかな消費が生まれる松江南部、文化と若さが交差する北部、家族の温もりに包まれた東部、そして産業と暮らしが密接に結びついた安来。

「なんとなく松江周辺で」という曖昧な動機ではなく、「誰の、どんな瞬間に役立ちたいか」という問いを突き詰めることで、あなたのビジネスが根を下ろすべき場所は、自ずと浮かび上がってくるはずです。商圏データは、その場所を探し当てるための確かな地図となります。 ぜひ、この地域の豊かな風土と人々の暮らしに想いを馳せながら、あなただけの「最高の出店地」を見つけ出してください。

店舗ネットワークでは、店舗探しから出店準備内装集客販促までをトータルでサポートしています。島根県松江市・安来市で開業を検討される際は、お近くの店舗ネットワーク加盟店に是非ご相談ください。

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