【松山市出店ガイド】3大エリア+郊外地域、商業動向とテナント戦略

四国の経済・文化を牽引する中核都市、松山市。温暖な気候と、道後温泉や松山城に代表される豊かな歴史・観光資源を背景に、安定した都市圏を形成しています。
この街の商業構造は、他の地方中核都市と比較しても非常にユニークな特性を持っています。多くの都市が単一のターミナル駅を中心に商圏を形成するのに対し、松山は広域交通を担う「JR松山駅」と、市内交通のハブである「松山市駅」がそれぞれに拠点を形成。さらに、市内随一の繁華街である「大街道」、そして全国的な知名度を誇る観光地「道後温泉」が加わり、明確な個性を持つ4つのエリアが都心部で競合・共存しています。
この複雑で多極的な構造は、出店を考える事業者にとって、各エリアの特性を深く分析し、自社の事業コンセプトと合致する最適な場所を選定する高度な戦略眼が求められます。本コラムでは、これから松山市で出店を検討されている事業者様のために、ポテンシャルとテナント動向を、商圏データに基づき解説していきます。
■10秒でわかる!この記事の内容
・大街道・松山市駅:流行と消費活動が集中する、松山商圏の絶対的中心。
・JR松山駅:再開発によって将来性が期待される、広域交通とビジネスの拠点。
・道後:観光需要に特化し、高付加価値な「非日常」を提供する市場。
・郊外エリア:地域住民の「日常」に密着し、多様なライフスタイルを支える拠点。
■【大街道・松山市駅】松山の商業機能が集中する最大拠点
松山市の商業活動の絶対的な中心核を成すのが、「大街道」「松山市駅」エリアです。この二つのゾーンは近接しており、一体的な広域商圏を形成しています。
まず、全長約500mのアーケードを有する大街道商店街は、松山を代表する中心商業地です。ファッション、飲食、サービスといった多様な業種の店舗が集積し、平日・休日を問わず高い集客力を誇ります。商圏データを見ても、その「繁華街性」は際立っており、買い物や食事といった明確な消費目的を持つ人々が広域から訪れる「目的地」としての機能が非常に強いエリアです。
その大街道と接続するのが、伊予鉄道のターミナル駅である松山市駅です。駅直結の百貨店「いよてつ高島屋」は地域経済の核であり、周辺には若者向けのファッションビルや飲食店が密集しています。市内電車・バス網のハブでもあるため、交通結節点としての人流は絶大です。データ上も、昼間人口の集中度は市内随一であり、通勤・通学者と買い物客が交差する一大拠点となっています。
このエリアでの出店は、松山の消費トレンドの中心に事業を置くことを意味します。ターゲット層は若者からファミリー、ビジネスパーソン、シニア層までと極めて幅広く、多様な業態に事業機会が存在します。大街道では、情報発信力の高さを活かしたアパレルやコスメの旗艦店、話題性の高いカフェやレストラン、夜間の飲食需要に応える居酒屋やバーが求められます。松山市駅周辺では、交通利便性を活かしたクイックサービス型の飲食店や、百貨店顧客層をターゲットとした高付加価値型の物販・サービス業が有望です。家賃は市内最高水準ですが、それを上回る圧倒的な集客力とブランド構築効果が期待できる、松山随一のプライムエリアです。
■【JR松山駅】再開発で変貌する広域交通の結節点
愛媛県全体の広域交通の玄関口として機能するのが「JR松山駅」です。現在は鉄道高架化事業に伴う大規模な再開発の途上にあり、数年後には新たな駅ビルが開業予定であるなど、街の姿は大きな変貌期を迎えています。この将来性こそが、当エリアを分析する上での最重要ポイントです。
現状のJR松山駅周辺は、松山市駅・大街道エリアが「商業」の拠点であるのに対し、「交通・ビジネス」の拠点としての性格が色濃いエリアです。商圏データを見ると、周辺には企業や専門学校が点在し、ビジネス目的の昼間人口が多いことがわかります。また、駅西側には古くからの住宅地が広がり、地域住民の生活拠点としての機能も有しています。
このエリアにおける出店戦略は、将来的な発展を見据えた中長期的な視点が不可欠です。短期的には、出張者や旅行者といった来訪者をターゲットとしたビジネスホテル、レンタカー、手軽な飲食店、土産物店などが安定した需要基盤となります。また、周辺のオフィスワーカーや地域住民を対象とした、日常使いのランチを提供する飲食店やコンビニエンスストアも堅実な選択肢です。
今後、再開発が完了し新駅ビルが稼働すれば、人の流れは劇的に変化する可能性があります。これまで中心市街地へ流出していた消費者を駅周辺に滞留させる力が生まれ、新たな商業集積地となるポテンシャルを秘めています。変化の過渡期である現在は、将来の成長を見越した先行投資的な出店を検討する好機とも言えるでしょう。
■【道後温泉】観光需要に特化した高付加価値市場
日本三古湯の一つに数えられる道後温泉は、単なる温泉地ではなく、エリア全体が歴史と文化に根差した強力なブランドを形成する、国内屈指の観光地です。シンボルの道後温泉本館を中心に、高級旅館やホテルが集積し、「道後ハイカラ通り」と呼ばれるL字型の商店街が観光客で賑わいます。
商圏データを分析すると、その特性は「観光特化型」であることが明白です。居住人口に対し、宿泊業や飲食サービス業の従業者を含む昼間人口が極めて多く、エリアの経済活動が観光客によって支えられていることが分かります。来訪者の目的は「非日常体験」であり、消費行動も記念品や思い出作りといった要素が強くなります。
ここでの事業成功の鍵は、「ここでしか得られない」という付加価値の提供に尽きます。道後ハイカラ通りでは、愛媛の特産品である柑橘類や今治タオルを扱う土産物店、食べ歩きに適したご当地グルメなどが定番の人気を誇ります。さらに、歴史的な街並みと調和する古民家カフェ、地元の旬の食材を活かした高単価なレストラン、砥部焼や地酒といった愛媛の伝統文化を発信するセレクトショップなども、質の高い体験を求める観光客層に強く訴求します。
低価格競争ではなく、品質、独自性、そして何よりも「おもてなし」の精神に基づいた店づくりが求められます。旅行者の記憶に残る価値を提供できるかどうかが、この特殊な市場で成功を収めるための絶対条件です。
■【その他の注目エリア】多様な地域ニーズに応える郊外拠点
松山の商業圏は、中心部の4エリアだけでなく、地域住民のライフスタイルを支える多様な郊外拠点によっても支えられています。
三津浜エリア:
歴史的な港町の風情が残る三津浜は、近年そのレトロな景観を活かしたリノベーション店舗が増加し、新たなカルチャー発信地として注目されています。地域コミュニティに根差しつつ、独自のコンセプトで事業を展開したい個人事業主などに適したエリアです。
木屋町・高砂町エリア:
松山大学や愛媛大学に近接するこの周辺は、典型的な「学生街」を形成しています。商圏データからも学生人口の多さは明らかであり、コストパフォーマンスに優れた飲食店や、学生生活を支援する各種サービス業に安定した需要基盤があります。
松山インターチェンジ周辺:
松山自動車道の結節点であるこのエリアは、幹線道路沿いにロードサイド店舗が集積する、典型的な郊外型商業地です。大規模駐車場を確保しやすく、広域からの自動車での来店を前提としたファミリーレストランや物販専門店などの業態に適しています。
■この記事のまとめ
事業の成功は、これらのエリア特性と自社の事業コンセプトをいかに的確にマッチさせるかにかかっています。データに基づき各エリアの性格を読み解き、現地で人の流れや街の空気を体感し、自らのビジネスがその街の未来にどう貢献できるかを構想すること。それが、この魅力あふれる街・松山で確かな成功を掴むための、最も重要な戦略となるはずです。
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