飲食・食品販売の新潮流「横持ち」を活用した多店舗展開とテナント選びのポイント

近年、別の拠点で製造したお弁当や総菜、飲食物を販売店舗へ配送して販売する「横持ち」という手法が大きな注目を集めています。特に、大手ディスカウントストアの「トライアルGO」が近隣の西友店舗から商品を供給される形で、都市部の狭小店舗へスピーディーに出店を加速させている事例は記憶に新しく、流通業界における新たな出店モデルとして定着しつつあります。この手法の最大のメリットは、各店舗に高額な厨房設備を導入することなく、製造拠点を稼働率を高めながら効率的に販売網を拡大できる点にあります。
本記事では、この「横持ち」を活用して食品販売拠点を増やしたいと考えている事業者向けに、テナント物件を探す際に見落としてはならない立地選定のポイントや物流動線、さらには法的な注意点までを網羅的に詳しく解説します。
■10秒でわかる!この記事の内容
・食品の「横持ち」販売は、自前で厨房設備を持たずに販売網をスピーディーに拡大できる注目のローコスト出店モデル
・テナント選定では厨房インフラが不要となるため、狭小物件や飲食不可物件も選択肢に入り、初期投資を大幅に削減
・駅前、オフィス街、住宅街など、立地ごとに異なる需要特性を理解し、ターゲットに合わせた営業戦略の構築が必要
・効率的な商品の供給を維持するため、配送車両の駐車スペースやスムーズな搬入動線といった物流面の確認が不可欠
・調理がなくても保健所への営業届出や食品衛生責任者の配置が必要であり、適切なインフラと法規制の把握が成功の鍵
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■横持ち食品販売モデルがもたらす店舗開発の変革とメリット
従来の飲食店や惣菜店を開業する場合、店舗開発において最も高いハードルとなるのが厨房設備の導入に伴う巨額の初期投資と、それを収容するための物件スペックの確保でした。重飲食に対応した排気ダクトやグリストラップ、大容量のガスや水道、電気の引き込み線が整った物件は市場でも限られており、保証金や内装工事費を含めると数百万円~数千万円規模の資金が必要となることが一般的です。
しかし、別の拠点で一括調理されたパッケージフードを配送して販売する「横持ち」スタイルであれば、これらの高額な調理インフラが一切不要になります。極端に言えば、一般的な物販店やオフィス跡地、あるいはわずか数坪の狭小スペースであっても、商品を陳列するショーケースとレジ、最低限の電源さえあれば明日からでも食品販売店として機能させることが可能です。これにより、出店に関わる初期費用を従来の数分の一にまで抑えることができるだけでなく、物件選定の選択肢が爆発的に広がり、退去時の原状回復リスクも大幅に軽減されるという、店舗経営における圧倒的な柔軟性を手に入れることができます。
■ターゲットに合わせた最適な立地の比較分析
横持ちによる食品販売は、厨房が不要であるからこそ、多様な立地への柔軟な出店が可能となりますが、それぞれのエリアが持つ商圏特性や顧客の消費行動を深く理解して物件を選ぶ必要があります。
まず、最も高い集客力が期待できる駅前や商業中心地は、通勤通学客や買い物客など圧倒的な人流が存在する一等地です。こうしたエリアは坪単価が非常に高い傾向にありますが、横持ちモデルであれば、キオスクや小規模なコーヒースタンドのような、わずか数坪の極小物件でも出店が可能なため、固定費を抑えつつ高い投資対効果を狙うことができます。ここでは、朝の通勤時や夕方の帰宅時に「ついで買い」をしやすい動線上の物件を選ぶことが成功の鍵となります。
次にオフィス街は、平日の昼時、特に十一時半から十三時半までのわずか二時間に需要が極端に集中するという明確な特性を持っています。短時間で大量のランチ需要を捌く必要があるため、店内の混雑を緩和できるゆとりあるレジ前スペースや、スムーズなワンウェイの回遊動線が確保できる間取りが求められます。土日祝日の人流が完全に途絶えるエリアも多いため、家賃設定と平日の売上予測を厳密に計算しなければなりません。
これらに対して住宅街やベッドタウンは、主婦層の昼食や、夕方以降の家庭の食卓を彩る夕食のおかずや惣菜としての需要が中心となります。地域住民が日常的に繰り返し利用する場所であるため、駅前やオフィス街のような一過性の消費ではなく、飽きられないメニューの多様性や親しみやすい価格帯が重視されます。
最後に郊外やロードサイドにおいては、自動車での来店が前提となるため、十分な駐車スペースの確保や、幹線道路からの視認性、車での出入りのしやすさが何よりも優先されます。近隣の大型スーパーやコンビニエンスストアが強力な競合となるため、自社の製造拠点だからこそ提供できる独自性や、専門店としての尖った商品力がなければ埋没してしまうリスクがあります。
このように、各立地のメリットとデメリットを比較秤量し、自社の商品特性が最も活きる場所を見極めることが肝要です。
■物流・配送効率を左右する「横持ち」ならではの物件チェックポイント
横持ち販売ビジネスの生命線は、製造拠点から各販売店舗へ商品を運ぶ物流の効率性にあります。どれだけ人通りの多い優れた立地であっても、商品の搬入が困難な物件を選んでしまうと、配送コストが膨れ上がるだけでなく、タイムリーな商品補充ができずに欠品ロスを引き起こす原因となります。物件探しの段階で最も注意すべきなのは、配送車両が店舗のすぐ近くに一時停車できるスペースがあるかどうかという点です。
都市部の駅前や幹線道路沿いでは、駐車禁止の取り揃えが厳しく、商品の荷下ろしのために何百メートルも離れたコインパーキングから台車で運ばなければならないケースもあり、これが毎日の運用となれば配送スタッフの疲弊や人件費の高騰に直結します。また、搬入口から店内の陳列棚までの横の動線と縦の動線の確認も欠かせません。一階の路面店であれば台車を使ってスムーズに搬入できますが、二階以上の空中店舗や地下物件の場合、エレベーターの有無やその積載重量、あるいはビル共用のエレベーターの混雑具合によって搬入に多大な時間を要することがあります。さらに、ビルによっては搬入可能な時間帯が厳しく制限されていることもあるため、自社の製造・配送スケジュールと合致するかどうか、管理組合やオーナーへの事前確認を怠ってはなりません。
■食品衛生法の法的要件と最低限必要なインフラ設備
店舗で直接調理を行わない横持ち販売であっても、食品を扱う以上、食品衛生法をはじめとする法的な規制や保健所の基準を厳格にクリアしなければ営業を始めることはできません。2021年の食品衛生法改正以降、調理行為を伴わず、あらかじめ密閉された容器包装に入れられた食品を仕入れてそのまま販売する業態は、従来の許可制から営業届出の対象へと変更されました。
これにより開業の手続き自体は大幅に簡略化されましたが、依然として店舗ごとに食品衛生責任者を配置することは義務付けられています。また、いくら調理設備が不要とはいえ、商品を安全かつ衛生的に保管・陳列するためのインフラは不可欠です。特にお弁当や惣菜、寿司などを扱う場合、適切な温度管理ができる冷蔵ショーケースや冷凍庫、または温かい状態を維持する保温什器の設置スペースと、それらを安定して稼働させるための電気容量が物件に備わっているかを確認しなければなりません。店舗全体の電気容量が不足している場合、建物の基幹部分からの幹線引き込み工事が必要となり、数十万円から数百万円の予期せぬ追加費用が発生することがあります。加えて、従業員の手指消毒や店舗の清掃用に、簡易な給排水設備や手洗い器の設置を保健所から指導されるケースも多いため、完全に水回りのない物件は避け、必要最低限の配管が通っているテナントを選ぶのが賢明です。
同時に、製造拠点側でも惣菜製造業などの適切な営業許可を取得していること、固定された拠点から安全に運ぶための温度管理された配送体制が整っていること、そして販売する商品には法律に則った食品表示ラベルが正しく貼付されていることが大前提となるため、サプライチェーン全体での法令遵守体制を整えることが、持続可能な拠点拡大の礎となります。
■この記事のまとめ
食品の横持ちによる多店舗展開は、製造拠点のポテンシャルを最大限に活かしながら、圧倒的なスピードとローコストで市場を開拓できる極めて合理的なビジネスモデルです。しかし、その成功は、厨房が不要というメリットに甘んじることなく、立地ごとの緻密な需要予測と、毎日の配送を支える物流動線の確保、解りやすい動線、保存設備への投資、そして衛生管理を全うするための最低限のインフラ確認を徹底できるかどうかにかかっています。
店舗ネットワークでは横持ち販売による食品販売店についても、飲食店と同様に基準をお客様と共にチェックしながら物件をご紹介しております。これから開業される方、あるいは店舗を増店されたい方はぜひ店舗ネットワークにご相談ください。
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