空室リスクを解消! 飲食店をテナントに迎えるメリットと注意点

街を歩いていたり、物件検索サイトを眺めていたりすると、長期間にわたって「テナント募集中」の看板が掲げられている物件を目にすることは少なくありません。空室状態が続くテナントを抱えるオーナー様の中には、なぜ借り手が見つからないのか、どのように対策を講じればよいのかと頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
前回のコラムでは、なぜ飲食店テナントの需要が高いのか、そして飲食店を受け入れることで得られる賃貸経営上のメリットについて、飲食店テナントの出店需要が絶えない背景や飲食店可能にする最大のメリットを市場環境や賃料収益から解説しました。
今回は実際に飲食店可能にするために気を付けるポイントとして用途地域など法規面や設備要件、また立地ごとの注意事項について見ていきます。
■10秒でわかる!この記事の内容
・オフィスや物販に比べ、体験を提供する飲食店のテナント需要は底堅く安定している。
・飲食店は特殊な設備投資を前提とするため、他業種より高い賃料設定で貸し出しやすい。
・テイクアウトやデリバリー業態の台頭で、一等地でなくても空室を埋めるチャンスが拡大している。
・用途地域や必要な設備要件を事前に確認し、トラブルを防ぐことが長期運営の鍵となる。
・「軽飲食」と「重飲食」の違いを理解し、物件に合った戦略的な募集条件を設定することが重要。
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■空室リスクを低減させる飲食店の多様性と集客力
物件の空室期間が長引く原因の一つに、立地の不利な条件が挙げられます。駅から遠い、人通りが少ない、空中階や地下にあるといった条件は、通りすがりの来店を主なターゲットとする物販店やサービス業にとってはマイナス要因となります。
しかし飲食店の業態によってはこの限りではありません。現代の消費者はグルメサイトや地図アプリ、ソーシャルメディアを駆使して、自分の目的に合った飲食店を自ら探し出して足を運びます。提供する料理やサービスの質が高く、コンセプトが明確であれば、立地的なハンデを覆して目的来店を促すことが可能なのです。
隠れ家的なレストランや完全予約制の専門店などは、あえて人目につかない落ち着いた立地を選ぶことすらあります。また先述したテイクアウト専門店やデリバリー特化型店舗であれば、来店客用の広い駐車スペースや目立つ看板は必須ではなく、清潔な厨房スペースさえ確保できれば営業が成り立ちます。
このように飲食店は業態やコンセプトによって求める物件の条件が極めて多様であるため、一般的な基準では貸しにくいとされる物件であっても、独自の視点で価値を見出してくれる借り手が現れる可能性が高いのです。ターゲットを飲食店にまで広げることは物件の潜在的な可能性を引き出し、マッチングの確率を大幅に高めることにつながります。
特に、物件の形が少し不規則であったり、メインストリートから一本裏に入っていたりする物件であっても、店内のレイアウト工夫や隠れ家的な演出によって、かえって魅力的な空間に生まれ変わるケースが多々あります。結果として長期化する空室リスクを効果的に低減させ、安定した賃貸経営を実現するための有力な手段となります。
■飲食店テナントが貸出可能な「用途地域」と「設備要件」
飲食店可能物件への転換は多くのメリットをもたらしますが、無条件にどの物件でも飲食店を誘致できるわけではありません。オーナー様が必ず確認しておかなければならないのが、都市計画法に基づく用途地域の制限です。用途地域とは計画的な市街地形成のために、建築できる建物の用途や規模をエリアごとに定めたルールのことです。
第一種低層住居専用地域のような閑静な住宅街を守るためのエリアでは、原則として独立した飲食店の営業は認められていません。一方で商業地域や近隣商業地域であれば、規模を問わず飲食店の出店が広く認められています。物件がどの用途地域に属しているかを事前に自治体の窓口などで確認し、法的に飲食店が許可される場所であるかを把握することが出発点となります。
用途地域の制限をクリアした上で直面するのが、物件の物理的な設備要件です。飲食店は水道やガス、電気を大量に使用し、同時に匂いや煙、熱を排出します。したがって十分な容量の電気やガスが引き込まれているか、太い給排水管が通っているか、そして屋上まで排気ダクトを立ち上げることができるルートが確保されているかといったインフラの確認が不可欠です。
これら設備要件を満たしていない場合、テナント側で高額な追加工事を行う必要が生じ、結果として出店が見送られてしまう原因となります。またテナント入居後の近隣トラブルを防ぐためにも、排気の方向や騒音対策についてはオーナー側であらかじめ基準を設け、契約時にしっかりと取り決めをしておくことが健全なテナント運営の要となります。
■「軽飲食」と「重飲食」の違いとテナント戦略への活用
飲食店を募集するにあたり、もう一つ押さえておきたい重要な概念が軽飲食と重飲食の区別です。これらの言葉に法律上の厳密な定義はありませんが、不動産業界では一般的に調理過程で発生する煙や匂い、油の量によって分類されます。軽飲食とはカフェや喫茶店、バー、サンドイッチ専門店など、大掛かりな調理を伴わず煙や強い匂いが出にくい業態を指します。これに対して重飲食は、焼肉店、中華料理店、ラーメン店、焼き鳥店など、大量の油を使用したり強い火力で調理を行ったりするため、強力な排気設備や特別なグリストラップの設置が必須となる業態を指します。
オーナー様が物件を飲食店可能として募集する際、すべてを許可する重飲食可とするか、制限を設けて軽飲食のみ可とするかは、テナント戦略を大きく左右する決断となります。重飲食まで許可すればあらゆる飲食ジャンルが候補となるため、テナントの間口は最大限に広がりますが、設備への負荷が大きく近隣からのクレームリスクも高まります。
一方、軽飲食に限定すれば設備投資やトラブルのリスクを低減しつつ建物の清潔感を保ちやすくなりますが、募集の対象となる業態は絞られます。物件の既存設備、上階や隣接する入居者の属性、そして周辺環境とのバランスを総合的に判断し、どこまでの業態を許容するのかを明確に定めておくことが、募集後のミスマッチを防ぐために極めて重要です。自社の物件特性を正しく把握し、戦略的な募集条件を設定することが成功への近道です。
■この記事のまとめ
テナントの空室状態の解決策として、出店需要が底堅い飲食店をテナントとして迎え入れることは、賃料収益の向上や空室リスクの解消といった強力なメリットをもたらします。もちろん、用途地域の確認や設備面の調整、近隣への配慮など、乗り越えるべきハードルは存在しますが、適切な募集戦略を立てれば、長期にわたって空室を回避することができるはずです。
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